vol.16 英語コーチと観察力
コーチングのはじめに、2ヶ月後の目標とカリキュラムを伝えます。それに従って学習を進めていくわけですが、必ずどこかで「うまくいかない」ということが起こります。
リスニングの練習でどうしても聞こえない部分があったり、スピーキングでは言葉がなかなか出てこず、詰まってしまうということがある。
そういうときに、コーチの観察力が問われます。
なぜできないのか、その理由を見つける必要があるからです。
スポーツやトレーニングは、フォームだったり動きが違っていれば、私たちは目で見て分かります。鏡で姿を見せて「ここが違う」と本人に見てもらうこともできる。
けれど、英語を話すときに発生する問題は、スポーツのように目では確認できないんですね。問題は生徒さんの頭の中で起こっていて、私たちは、頭の中で何が起こっているかを観察しなければいけない。ここに、英語コーチの難しさとやりがいがあります。
例えば、リスニングをやっていて「英語が聞き取れない」という問題が起きたとき、僕は次の順番でチェックしていきます。
生徒さんに真似して発音してもらう
↓
聞こえていない音はないか、違った形で聞こえていないか?
↓
今度はコーチも一緒に、アクセントの位置までそっくりに真似をする
↓
もう一度聞いてもらう
これだけチェックすればどこかしらに引っかかるわけですが、たまに、それでも聞こえないという方もいたりする。英語教育は、ある程度同じやり方も通用するけれど、人によってアプローチを変えなければいけないこともあるとコーチは覚悟しておくべきです。そういうとき「この人の頭の中はどうなっているのだろう?」という観察が必要になります。
観察して、答えが見つかればいいのです。見つからないと、その生徒さんはずっと同じ課題で止まることになる。実際はずっと止まってもいられないので、量をこなしたり他のことに手をつけた後に戻って来て確かめるわけですが、理想はきちんと観察して一発で解決してあげられることだと思います。
きちんと観察ができているコーチの下には、徐々に情報が溜まっていきます。
それは
「こういう症状が出ていたから → こうやって解決した」
という「英語カルテ」のようなもの。
こういうカルテをたくさん持っている講師を「経験豊か」と呼ぶのでしょう。
カルテが溜まってくると、過去の事例をさかのぼって、様々な「処方」ができるようになります。
英語コーチは、経験が溜まるほど素早く適切なアドバイスができるようになります。その源にあるのは、コーチの観察力であることを忘れてはいけません。